ロペペディア

日々の雑感

「子どもにとって『空気』でありたい。」【NPO法人自然体験共学センター理事長】細川 和朗

こんばんは。

ロペスです。

 

 

ライター業を始めてすぐ、「インタビューさせてください!」とSNSに投稿したところ、有り難いことに各方面からご協力をいただきました。

かけだしの頃(今もかけだしですけど)の私に声をかけていただき、本当に感謝しています。

ありがとうございました。

 

今回はその最後のインタビュー。

お相手は「わっくん」こと細川和朗さん

 

 

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畿央大学の先輩であり、当時私が関わっていた大学主催の「学習キャンプ」の先輩でもあります。

 

www.kio.ac.jp

 

柔らかな物腰で、寡黙ながらもピンチの時は的確なアドバイスをしてくれる。

ここぞ!というところで頼りになる、安定感のある先輩です。

 

現在福井県NPO法人自然体験共学センター」の理事長をされていて、日々子どもの「ちょっとしたチャレンジ」を見守っているわっくんさん。

 

NPO法人自然体験共学センター | 「ちょっとチャレンジ」を応援します!

 

遠方のため、残念ながら直接お会いしてインタビューは出来ませんでしたが、昔と変わらぬ温かみのある声や言葉を聞けて心がほっこりしました。

 

駆け出しライターロペスのインタビュー最終回。

仕事終わりの深夜の一室で、Skypeでつながれたパソコンを眺めながらのスタートです。

 

 

野外活動との出会い

 

 

ロペスお久しぶりです、わっくんさん!今回インタビューをするにあたってfacebookを確認したんですが、今NPO法人の理事長されてるって書かれていて、びっくりしました(笑)

 

わっくん:久しぶりやね。卒業以来かな?そんな大したものじゃないよ(笑)大学時代にやっていた野外活動の延長線上に今があるって感じだから。

 

ロペス:大学時代、確か吐山の奈良県立野外活動センターでキャンプリーダー(子どもの野外活動を支援するスタッフ。)されていましたよね?その後もずっと野外活動畑ですか?

www.pref.nara.jp

わっくん:そうだね。その時の経験がきっかけでずっとこの業界でやってるね。大学の途中までは幼保(幼児教育)の勉強をずっとしていて、進路もそっちで考えていたけど、キャンプリーダーの経験をしてからは気がついたら進路が野外活動の方に切り替わって。卒業してからずっと今のNPO法人で仕事してるね。

 

ロペス:そもそも何で野外活動に興味を持たれたんですか?

 

わっくん:きっかけはロペスもよく知ってる大学の「学習キャンプ」やね。先輩達が授業の時にスタッフ募集の話をしに来て、それがすごく「面白そうだなあ」と思って、興味を持ってスタッフになったかな。最初は本当に不安とか何もなく、というか何をするかもあんまりわかってなくて(笑)とりあえず先輩について回ってるって感じだった。その時キャンプ本番で出会った野外活動センターの先生に誘われて、キャンプリーダーのボランティアスタッフとして活動を始めたっていう流れやね。

 

  

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学習キャンプでの野外炊飯の様子。

 

 

ロペス:そうなんですね。学習キャンプ、周りで一緒にやっていた同期も後輩も、みんな言いますね。「あれは転機だった」って。自分もそうでした。

 

わっくん:ほー、多いんだね。自分はキャンプやる前は究極のインドア派で、引きこもりや不登校が5,6年あったりしたから、こういう活動をするタイプではなかった。企画を作ったり、周りの後輩をまとめたりするのも結構苦痛で。あんまり得意ではなかった。今でも覚えているのが、自分の企画を立案する際、先生に見てもらうでしょ?あの時にボコボコに言われて大泣きしたんだよね。先輩達にめっちゃ慰められた(笑)

 

ロペス:そうだったんですか!?全然知らなかったです(笑)

 

わっくん:そういう人前で泣くみたいな、感情を表に出した時受け止めてくれる人たちがいてくれたっていうのも自分の中では初めての経験だった。学習キャンプでは引きこもりがちで内向的だった自分が、周りの人達とコミュニケーションをとったり、気持ちをぶつけ合ったりする中で、大きく成長したなって思う。今でも内向的なところはあるけど、喜怒哀楽を出してもいいんだなって思えたのは、学習キャンプのお陰やね。

 

ロペス:その後奈良県立野外活動センターでキャンプリーダーとして活動されていたんですよね?

 

わっくん:そうだね。入ってすぐ2年くらいは長期休暇や大きなイベントがある時に参加していて、行きたい時に行くっていう、気軽なスタイルでやっていたかな。その時はキャンプに参加してる子ども達7-8人くらいのグループのキャンプリーダーとして関わっていた。3年生、4年生になるにつれて年数が上がって役割を任されるようになってからは、2泊3日の大きなキャンプ企画を企画作りから関わらせてもらったりしていたね。

 

ロペス:なるほど。現場から入って、企画、運営側に入って活躍されていたんですね。

 

 

 忘れられないキャンプ

 

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奈良県立野外活動センタースタッフ。 

 

 

ロペス:野外活動をされていた中で、自分にとって大きかった、忘れられないキャンプ企画とかってありますか?

 

わっくん:グループリーダーとして関わったキャンプでいうと、奈良県立野外活動センターでのキャンプかな。「もっと野外活動を本気でやりたい!」って思ったきっかけになった、自分にとって大きなキャンプだね。当時の自分はグループの子どもたちをうまくまとめられなくて、事あるごとに声を荒げて怒っていた。それでも子どもたちはうまくまとまらなくて、自分の不甲斐なさや悔しさっていうものをすごく感じていた。また同時に子どもたちに「こんなリーダーでごめんね」っていう気持ちもあったね。

 

ロペス:わかります。うまくまとまらない時って、どうしてもイライラして口調が荒くなったり、対応がキツくなったりしてしまいますよね。で、その一方で「自分は何をやってるんだ」っていう自己嫌悪に陥る。

 

わっくん:うんうん、そうだね。このキャンプは失敗経験として自分の中に残っていて、もっとキャンプリーダーとして成長したいって思った大きなきっかけになった。キャンプの最後に子どもたちとキャンプを振り返る時間があって、そこで子どもたちの話だけでなく、自分も反省を話したりしたね。

 

ロペス:子どもの前でですか!?それって中々出来ないことだと思いますよ。教育者たるもの堂々と自信を持って正しくあるべきみたいな考えやプライドが邪魔して。そこで話せるってすごいことだと思います。

 

わっくん:どうだろう。ロペスもリーダーやってたらわかると思うけど、最後の振り返りって「キャンプ楽しかったね!いぇー!」みたいに楽しい話題で盛り上がって終わるところでもあると思うんだよね。でも自分はさっきも言ったように内向的な人間で、あまり盛り上げるタイプではなかったから、内から出てくる反省とか、そういった話題でまとめたかな。

 

ロペス:そうなんですね。それも一つの武器だと思いますけど。自分は盛り上げて「何か楽しかったな」だけで終わらせてしまうリーダーだったので、わっくんさんみたいに落ち着いてキャンプの経験を振り返る場を作れるっていうのは、本当に羨ましく思います。

 

 

東日本大震災支援活動「のびのびキャンプ」

 

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のびのびキャンプ集合写真。 

 

 

ロペス:企画・運営側の立場でされたキャンプの中で、忘れられないキャンプってありますか?

 

わっくん東日本大震災支援の活動の一つで参加させてもらった「のびのびキャンプ」

かな。

www.kio.ac.jp

福島県で被災した子どもたちと関わるキャンプなんだけど、一人の子どもに一人の学生スタッフがつくっていうマンツーマンスタイルで関わるんだよね。その企画の学生リーダーをやらせてもらって、色んな人たちと協力しながら、指示を出したり、動いてもらったりしていた。一人ひとりの子どもたちやボランティアの学生スタッフと関わる立場ではなかったから、全体を見てっていう視点だったんだけどね。

 

ロペス:学生リーダーですか!?要するに学生で一番偉い人ってことですよね?

 

わっくん:いや、そんなんじゃないよ。本当にみんなに支えられてリーダーをさせていただいていたって感じだね。たくさん助けられたし、自分ひとりでは出来なかった。

 

ロペス:わっくんさん、本当に謙虚ですよね。僕は絶対「自分がトップ張ってやってました」って言っちゃいますよ(笑)

 

わっくん:本当に「させていただいてた」だからね。メンバーあってのリーダーだと僕は思うし。企画として一人ひとりと関わるという機会はあまりなかったけど、全体と関わっていて、最後にみんなが大変なことやしんどいことを悩みながら乗り越えて、キャンプを終えた。その時に涙ながらの子どもとのお別れがあったり、ハグがあったりして、その様子を見た時は「やってよかったな」って思ったね。こちらからどうというわけでなく、スタッフや子どもたちから自然とそういう行動が現れるというのは、両者の間で感動が共有されていたのかなって思う。

 

ロペス:そういう場を作れるってすごいですね。中々イベントで一人ひとりに感動体験をつくるっていうのは難しいと思います。

 

わっくん:そこは僕が何かできたわけではなくて、本当に周りに恵まれていたなと思うところだね。さっきも言ったように、自分は「させていただいていた」だから。立場的には偉くなきゃいけない立場だけど、そうはありたくなかった。

 

ロペス:「偉くありたくなかった」というのは何故ですか?

 

わっくんその人がいなくなったら何もできなくなるっていう状況をつくりたくない、っていうのが一番大きなところかな。やっぱり偉い人っていうのは、自分で全部してしまう。そうすると周りも頼りっきりになってしまうよね。だからメンバーが他人任せにならず、周りが自分抜きでもやっていけるようになるために、自分は偉くなくていいと思ったかな。

 

ロペス:なるほど。チームとしたら大事な視点ですもんね。ただ僕個人的に「自分がいなくても大丈夫」っていうのは、「お前がいなくてもやっていけるよ」と言われているみたいで、寂しい気持ちになるんですよ。だから逆に「お前がいないとやっていけないよ」と言われている方が嬉しいです。わっくんさんはそういう気持ちって無いですか?

 

わっくん:いや、やっぱりあるよ。もちろんその企画をやる以上は、自分がいた爪痕を残したいという気持ちもある。でもこれはお世話になった先生に教わったことなんだけど、企画のコンテンツってどこでやろうと似たり寄ったりでしょ?違いが生まれるのって、やっぱり人だと思うんだって。プログラムありきじゃなくて、その人がいたキャンプだからこそ価値がある、その人がいるからキャンプが楽しい想い出として残る。そう考えるとこちらが何をどう提供するかというよりも、在り方が大事になると思う。確かに「○○ができる○○さん」っていう方が印象は残しやすいだろうけど、自分は違う形で残そうと思ったね。

 

 寄り添う関わり

 

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現在のNPO法人自然体験共学センターでの活動。 

 

 

ロペス:今までお話を伺ってきた中で、わっくんさんの人との関わり方に興味を持ったのですが、あまり積極的に引っ張っていく感じではないですよね。

 

わっくん:そやね・・・自分はあまりガンガン引っ張っていく関わり方はしないね。そういう積極的な性格じゃないし。

 

ロペス:そんなわっくんさんに聞きたいんですけど、「寄り添う」関わりってあるじゃないですか?自分この関わりがすごく苦手で、わっくんさんは答え持っているかなと思ったんで聞いてみたいんですけど。「寄り添う」って何でしょうか?

 

わっくん:寄り添うか・・・。一つは関わり続けるっていう「継続」かな。ときには距離を置いて、一人の時間をつくってあげるっていうのも大事。手は離しても目はかけるような関わり方も一つの関わり方だし、そういった距離を調節しながらも関わり続けることが大事だと思う。ずっと手をかけるんじゃなくて、出来るところは信頼して任せたり、期待をかけてさせてみたり、そういう関わり方もあると思うからね。

 

ロペス:距離の調節、大事ですよね。関わりすぎても駄目だし、かといって放任するのも無責任だし。

 

わっくん:そうだね。今って「やってごらん」って言える大人って本当に少ないと思う。何でも大人がやってしまったり、危険が無いよう先手を打って口を出してしまったりする。もちろんそれは子どもを案じてしていることで悪いことではないんだけど、子どもの成長の機会を奪いかねない。キャンプでも「子どもに任せてみよう」っていうスタンスに立てる大人ってどれだけいるんだろうって思うね。

 

ロペス:そこでさっと引けるかどうか、自分が出しゃばってしまわないかどうかってところですね。

 

わっくん:引くというか、我慢するに近いのかな。当然子どもに任せて大変な結果になる時もある。それをいかに受容できるか。その失敗を受容できて初めて「寄り添える」んじゃないかな。

 

ロペス:子どもに任せるって勇気がいるから難しいです。失敗したら怒られるのはリーダーだし(笑)だから先手打っちゃう。そこを子どもが挑戦できるように場作りするのは、本当にその人の器というか、心の許容量の大きさですね。

 

 

今後の自分

 

 

ロペス:最後に、これからどういった自分で在りたいか、どういったものを目指していきたいのかをお聞きしてもいいですか?

 

わっくん:これからの自分かー。今は一言で言うと「空気」でありたいなと思ってる。子どもたちのグループや、集団にとっての「空気」。「雰囲気」とも言えるかな。具体的に行動や仕組みを作るわけではなくて、目指す方向性を示し続けたいなと。でも、最後の責任は持っているんだ、ということも忘れずにいたいし。どうしても今の理事長って立場は、何でも決めて何でも形にできる立場だから、そういう自分を戒める意味でも「空気」っていうのを大事にしたい。

たまたま今の自分は好きが興じてこの仕事をさせてもらっているけど、本当に一人では何も出来ない仕事なのね。参加してくれる子どもたち、関わってくれるキャンプリーダーの人たち、色んな人たちの力を借りて初めて出来ている活動だからこそ、自分勝手でわがままでは駄目だと思う。もちろん自分のやりたいことも大事なんだけど、関わる一人ひとりの気持ちをしっかり汲み取ってやっていかないといけないなと思ってる。

 

ロペス:「空気」ですか・・・もう一貫してますね、わっくんさんの在り方。全然ぶれてない。逆に自分とはタイプの違うリーダーを見て、盛り上げたり引っ張ったりするやり方に憧れたりって経験はなかったんですか?

 

わっくん:もちろん憧れはあったよ。今もある。やろうと思えばそれに似たような持って行き方は出来るし、もっと出来るように頑張ろうっていう目標の立て方もあると思う。これまで以上にたくさんのことができるようになるのは魅力的だからね。でも「ないものねだり」よりは「あるもの探し」のスタンスだから、今は自分のタイプにあった方向で、突き詰めていきたいなと思ってるね。

 

ロペス「ないものねだり」より「あるもの探し」かー。いいですね、そのスタンス。諦めではない割り切り方、めっちゃ好きです。今回自分にとってとても勉強になりました。在り方の話、寄り添い方の話など、本当に示唆に富む話ばかりでした。ありがとうございました。

 

わっくん:こちらこそ、話しながら頭の中が整理されて良かったです。ありがとう。

 

 

 インタビューを終えて

 

 

仕組みや行動はもちろんのこと、「空気」として場を動かせるわっくんさんの在り方。

本当に勉強になりました。

「人としてどう在るか」という点について、深く考えさせられました。

 

また自分の中で長年課題だった「寄り添う」という関わり方についても示唆に富むお話をいただけました。

手をかけるだけが関わり方ではない。

時には任せてみることも大事である。

今後人と関わる時、こういう視点も自分の中の引き出しとして一つ持っておきたいなと思います。

 

わっくんさん、ありがとうございました!!

 

 

 情報

 

 

今回インタビューをさせていただいた「わっくん」さんこと細川和朗さんが理事長をされてるNPO法人自然体験共学センターでは、子どもたちと関わるボランティアリーダーを募集しています。

ご興味のある方は以下のサイトから。

 

NPO法人自然体験共学センター

なら秋キャンプ/防災チャレンジキャンプ~ボランティア大募集!~ | NPO法人自然体験共学センター | 「ちょっとチャレンジ」を応援します!

 

 

 

 

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