『保育士は誰にでも出来る』を考える。
こんにちは。
ロペスです。
ホリエモン、保育士について「誰でも出来る」とTwitterで発言し、プチ炎上になっていますね。
誰でもできる仕事だからです
— 堀江貴文(Takafumi Horie) (@takapon_jp) 2017年10月12日
「なんで保育士の給料は低いと思う?」低賃金で負の循環 (朝日新聞デジタル) - https://t.co/EuidhabdJ1
これについて、ちょっと考えていきたいと思います。
保育の難しさ
まず保育の仕事がどのようなものかというのを見ていきます。
実際自分も認定こども園というところで勤務していた経験があるので、その時の経験から思うことも合わせてご紹介します。
保育の5領域
保育所保育指針というものの中に、教育目標としてあらわされているのがこの「5領域」。
素人が傍から見れば、ただ預かって遊んでいるだけのように見えるかもしれません。
しかし実際は保育の専門家が考えに考え抜き、日々の実践の試行錯誤の中で行われているのが「保育」です。
現場の保育士がどのようなことを意識しながら保育を行っているか、この「5領域」がわかりやすいと思ったのでご紹介します。
「健康」
「健康、安全など生活に必要な基本的な習慣や態度を養い、心身の健康の基礎を培うこと」(保育所保育指針より)
・生活リズムを整える(昼寝の時間、食事の時間など)
・衣類の着脱(素早く正確に、たたみ方など)
・食事(好き嫌いなく食べる、フォークやスプーン、お箸などの食器の使い方、食べ方、食事中に席を立ったり食器を振り回さないといった簡単なテーブルマナーなど)
・排泄の自立(トイレットトレーニング、おしりの拭き方、排泄後の手洗いなど)
・病気予防(手洗いうがいの習慣、歯磨きなど)
・体づくり(手先のトレーニング、外遊びなど)
「人間関係」
「人との関わりの中で、人に対する愛情と信頼感、そして人権を大切にする心を育てるとともに、自主、自立及び協調の態度を養い、道徳性の芽生えを培うこと」(保育所保育指針より)
・友達との関わり(自分の思っていることを伝える)。
・自分で出来ることは、自分でやるようにする。
・きまりを守り、ルールを破らず遊ぶ。
「環境」
「生命、自然及び社会の事象についての興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の芽生えを培うこと」 (保育所保育指針より)
・五感を使って感じること
視覚(色の認識、風景)
聴覚(音、リズム)
触覚(柔らかい、硬いといった感触)
味覚(辛い、酸っぱい、甘い、苦いなど)
嗅覚(匂い、香り)
・自然の豊かさへの気づき
「言葉」
「生活の中で、言葉への興味や関心を育て、話したり、聞いたり、相手の話を理解しようとするなど、言葉の豊かさを養うこと」(保育所保育指針より)
・絵本や物語に触れる。
・話す、聞くなどの言葉を介したコミュニケーション。
・あいさつ。
「表現」
「様々な体験を通して、豊かな感性や表現力を育み、創造性の芽生えを培うこと」(保育所保育指針より)
・感動したことを伝える。
・自由に書いたり作ったりする。
・音楽でに親しみ、演じたりする。
こんなことをしてます。
これ、皆さん当たり前に出来ますよね。
ただ子どもが出来るよう教えるって、半端じゃ無いんですよ。
昼寝の時間、まあ寝ない。
保育士つきっきりです。
背中トントンします。
寝起きなんて1日の中で一番忙しい。
おねしょした子の布団やパンツを洗ったり、布団片付けて机や椅子を出したり、着替えの手伝いしたり、鬼のような忙しさ。
これを手早く、子どもを怒鳴りつけることなくストレスフリーにさせるベテラン保育士、すごいですよ。
排泄、3歳児おしりなんてろくに拭けません。
ケツにトイレットペーパーはさみながら出て来るわんぱくっ子もいてます。
冬は便座が冷たいといってトイレ行きたがらないですしね。
手先のトレーニング、これも大変。
折り紙綺麗に折れません。だいたい完成品はオブジェです。
はさみなんて触らせたらもう。
真剣な顔で指切ります。
おいマジかってなります。
怒鳴って、叱って、無理矢理やらせれば確かに出来ますよ。
でもそこは皆さんプロですから。
子どもがいかにストレスを感じず、楽しく出来るようにするか。
悩みながらも日々試行錯誤しています。
トイレ行きやすいよう、好きなキャラクターの絵をトイレに貼ったり。
お歌を歌いながらお着替えしたりね。
折り紙なんて、教えるの本当に難しいですから。
頂点なんて言葉知らないんですよ、子ども。
右と左の概念もまだあやふや。
谷折りと山折、どう教えます?
皆さんが普段行なっている「当たり前」。
生活習慣や礼儀、マナーなど。
これって勝手に身についていくものですか?
子どもに「当たり前」ってないんです。
何もかもが初めましての経験です。
それを「当たり前」にできるようにするのが、この時期の幼児教育なんです。
参考までに、実際に保育士が「遊び」をどのように工夫しているか、まとめられているサイトをいくつかご紹介します。
保育における子どもの社会性とイメージする力を育てる遊び
http://www.glico.co.jp/boshi/futaba/no80/con01_01.html
保育における遊びの概念について
「誰でも」の範囲と「出来る」の解釈
このホリエモンの投稿、保育士が誰でも「出来る」のではなく、保育士に誰でも「なれる」ならわかります。
資格取れればなれますからね。
その資格取得も、勉強に割ける時間、お金があってこそですけど。
あほだな。ちゃんと調べろよ。専門学校とか大学とか、通信制でも履修して研修うけりゃ誰でもなれんだよ。 https://t.co/AmsiRqjcAb
— 堀江貴文(Takafumi Horie) (@takapon_jp) 2017年10月15日
ちなみに彼からすれば、このレベルが「誰でも」にあたるそうです。
専門学校へ通える。
大学へ通える。
通信で勉強して研修を受けられる。
といった条件ですね。
これは「誰でも」満たせると。
「資格」の有無について。
それ自体が必要かどうかという話では、個人的に必要ないと思います。
ただ、それは「『知識・技術』が必要ない」ということではありません。
「私、何も知らないし出来ないけど、とりあえず頑張ります!」
って、どう考えても信用されないでしょ。
別にそういった信用が必要ない職業もあると思いますよ。
でも子どもの命預かるわけですよね。
食物アレルギーとか、栄養学の知識なくてやれますか?
下手におやつあげてアレルギーとか、マジで怖いですよ。
そんな知識無くて子ども発作起こしたらどうします?
エピペン打てるんですか?
この辺勘違いしてる人、多い気がします。
資格が無くても、知識・技術があって保育士に相当する力量があればそれはそれで構わないと思います。
知識・技術を証明するわかりやすいものとして「資格」があるわけですから。
証明する手段が資格の他にあるなら、資格自体の価値はなくなるでしょう。
ただ資格がなくていいからといって、ど素人が出来るかって言うと、それは違う。
というか、そもそも「出来る」って何ですか?
何をもって「出来る」って言えるんですか?
保育が「出来る」なんて、プロからも聞いたことないわ。
「どんな人でも、努力次第で知識・技術は習得可能で、実践を積み重ねるうちに理想の『保育』に近づける」
なら、しっくり来たんですけどね。
今回のホリエモンの投稿、後から発言の意図について詳しい説明があったのと、本筋が「給料が上がらない理由」だったこともあり、「保育士という仕事は誰にでもできる」についてはあまり議論がされていませんでした。
まっとうな議論が。
どれもこれも、反論が感情論でしたしね。
ということで、ちょっと専門的な内容を交えながら記事書いてみました。
「保育士さんって、すごいんだな」
って思ってもらえれば、幸いです。
ーーーーーーーーーーーーー
Follow me!!
https://www.facebook.com/hiromu.nakano
https://www.instagram.com/ropeth/?hl=ja
加古川の魅力を発信するメディア「palette」
お仕事(ライティング)の相談や記事の感想などはこちらから
ーーーーーーーーーーーーー