今ある学校の中で、最も民主的な学校ー【八ヶ岳サドベリースクールスタッフ:鈴木 一真】
こんにちは。
ロペスです。
皆さん、子どもが自分で何を学ぶか、何で遊ぶか、自由に決められる学校があるのをご存知ですか。
もっと言うと、そもそも学ぶかどうか、遊ぶかどうかも自由。
ただその自由には責任が伴い、自己決定に対して自己責任がある。
ある意味とても厳しい学校です。
その学校の名前は「サドベリースクール」。
アメリカのボストンにある「サドベリーバレースクール」がその発祥です。
日本には、兵庫県にある西宮サドベリースクールを始め、東京、神奈川、北海道などでも、サドベリースクールの考え方のもと運営されている学校があります。
数は少ないながらも、情報感度の高い教育者から熱烈な注目を浴びる学校です。
私の友人の言葉を借りると「数ある教育の中で最も民主的な学校」であるサドベリースクール。
今日はそんな学校の一つ、「八ヶ岳サドベリースクール」でスタッフとして働く一人の友人のインタビューです。
※インタビュー内容はスクールを代表するものではなく、個人の見解です。
元サドベリースクール生、現サドベリースクールスタッフ
鈴木一真、平成4年6月生まれの25歳。
元西宮サドベリースクールの学生で、現在八ヶ岳サドベリースクールのスタッフ。
好きな色は緑色。
フレームの太いメガネが似合うナイスガイ。
彼こそ私の友人であり、今回のインタビューの相手です。
インタビューの前に彼の経歴を説明しておきましょう。
小学校6年間は公立小学校で過ごし、公教育で言ういわゆる学力的にも生活態度も「優等生」だった彼。
12歳の中学生のころから、学びの場を兵庫県の西宮市にある西宮サドベリースクールへと移します。
そこで18歳まで過ごし、自身が持った課題意識である「社会で働けるかどうか」を試すため一度企業へ就職。
その後、西宮サドベリースクールでスタッフとして三年間勤務します。
サドベリースクールのスタッフとして働くことに面白さを覚えた彼ですが、「どこのサドベリースクールでも同じように面白いのだろうか」という疑問を持ち、次第に西宮サドベリースクール以外のスクールでも働いてみたいという思いを持ち始めます。
西宮サドベリースクールスタッフを三年間務めた後、他のスクールへの就活をしながら民間の保育園で勤務。
そして2016年1月、山梨県にある八ヶ岳サドベリースクールのスタッフに就任し、現在2年目を迎えます。
今回のインタビューでは、彼がサドベリーに惹かれた理由、現在の活動、今後どうしていきたいかなどを中心にお聞きしました。
インタビュー5本目。
山梨県北杜市、緑豊かな山々に囲まれた環境に癒やされながらスタートです。
12歳の選択
ロペス:そもそもなぜサドベリースクールを知っていた?
鈴木:元々弟が体験入学や見学で行っていて、そこから聞いた。当時弟はあまり学校が楽しそうではなくて、母親が他の学校を色々調べて「こんな学校があるよ」と弟に紹介したのが始まり。初回の体験入学で、弟がスクールのみんなとカラオケに行ったと話を聞いた時にすごく驚いて。「そんなん行っていいわけないやん」と当時は思っていた。
ロペス:小学校6年間通い、卒業してすぐにサドベリースクールに入った?。
鈴木:いや、一ヶ月くらいは中学校に通っていた。中学校に行くのは当たり前のことだと、その時は思っていたから。ただ弟の体験入学の話を聞いて「そうではない選択肢」に可能性を感じた。そして興味を持って自分も体験入学に参加し、スタッフの人と話したことで、今まで持っていた価値観が崩れ去った。
ロペス:スタッフとはどのような話をした?
鈴木:あまり詳しい内容までは覚えていない。ただサドベリースクールについて説明されたと思う。その話から、それまで自分が持っていた「中学校、高校、大学と進んで就職」という価値観が当たり前ではなかったのだと気づいた。
ロペス:一般の公立中学校から、サドベリースクールへ通おうと思ったのはなぜ?
鈴木:単純にここでやってみたい。サドベリーって楽しそうって思ったからかな。あと、さっきの話であったけど、自分は今まで優等生で人から言われたことしかやってこなかった。その自分のスタンスのせいで小学校は全然楽しくなかった。この先中学校、高校と進んでいってもずっと人から言われたことだけやり続けるのかと考えた時に、「自分のやりたいことってなんだろう」という疑問を持った。それを考えたくて、サドベリーへ行ったというのが理由かな。
ロペス:それは公立の中学校ではできないことだった?
鈴木:当時自分の中では中学校は言われたことをやるものだという認識だった。それを覆して、中学校の環境で自由にすることは考えられていなかったかもしれない。サドベリーでは「全部が自分の時間である」というのが良かったかもしれない。
ロペス:中学校は自分の時間がないと?
鈴木:そう。カリキュラムを変えたりは出来ないわけだから。やろうと思えば数学の時間だけ授業を受けるとか出来たかもしれないけど、それをしようとは思わなかったかな。そもそも数学をカリキュラムとして組み込むかどうかというところから、自分で考えたかったし。
ロペス:なるほど。それで総合的に判断してサドベリースクールを選んだわけね。
サドベリースクールとは
ロペス:そもそもサドベリースクールって一体何なの?
鈴木:俺が行っていたのは西宮サドベリースクールで、それ以外のサドベリースクールに通っていたわけではないから、全てのサドベリースクールがどうかというのは説明できない。当時の西宮サドベリースクールの説明ということならできる。
ロペス:じゃあ当時の西宮サドベリースクールについて、聞かせてもらっていい?
鈴木:そうやな。初めて聞く人に説明するなら、時間割がなくて、テストといった評価がなくて、○○すべきといった価値観の押しつけもない。自分の言動は全て自分で決められる。学校の予算やどんなスタッフを雇うかという学校を作る話し合いにも生徒全てが関わることが出来る。ただその結果出てきた結果の責任は、全て決定に関わった子どもたちにある。そんな学校ですって言うかな。
ロペス:うーん。わかりにくいな。サドベリー行けば、何をして、何が出来るようになるの?
鈴木:それはな、スタッフが一方的に決めて子どもたちに押し付けるものではないと思う。子どもが自分で考える事じゃないかな。サドベリーに行って、何がしたくて、何が出来るようになりたいのか。それは本人が考えることであってスタッフが決めることではない。
ロペス:なるほど。子どもたちが決めるのね。
鈴木:ただ今回は俺への個人的なインタビューだから、個人として子どもがどういう時間を過ごしているのか、何を得られるのかは語って良いものだと思う。
ロペス:是非語って(笑)
鈴木:サドベリースクールでは子どもたちが「自分の人生を自分で決めている」んだと思う。それは評価という他者からの価値観の押しつけがなくて、子どもの人権が保証されているという意味で、実現できている。
ロペス:評価があれば人権は保証されないの?
鈴木:評価基準があって、ああしないといけない。こうしないといけない。そういうのがあると、その子自身の人権が守られていることにはならないと俺は思うかな。
ロペス:うーん、その点は公立学校現場にいてた俺からすると、評価が人権を奪うっていうのは、ちょっと納得がいかないところだけど(笑)今回はそこが主題ではないから、是非機会を改めて評価の話はしよう。
鈴木:そうやね。とりあえず説明はこんな感じかな。全体向けにするなら、一言で「子どもの自由を100%信頼する学校」って説明している。
ロペス:今までの説明を聞くと、その一言でもなるほどってなるな。
八ヶ岳サドベリースクールでの生活
八ヶ岳サドベリースクールHP
ロペス:次に今働いている八ヶ岳サドベリースクールについて、聞かせてもらっていい?
鈴木:今はここで働いて2年目で、設立当初のことは話で聞いているだけなんだけど。俺の着任1年目の仕事は、スタッフのやることを整理しようと思って、色んな役職や必要な仕事を洗い出した。それをスクールミーティング(子どもたちが議決権を持つ会議)で提案して、広報の担当とか、事務の担当とかを決めたかな。あと、その時初めてスタッフ選挙も導入した。
ロペス:子どもがスタッフを雇うかどうか決めるっていうあれね。サドベリーならどこでもあると思ってたけど、無かったんだ。
鈴木:そう。またスタッフの契約期間なんかも決まってなかったから、任期を1年って提案して決めた。それがないと明日にでも辞められちゃうし永久的にそのスタッフを雇用することになるかもしれない。それはスクールにとって良くないと思う。
ロペス:なるほど。そうやって徐々に体制を整えてきたわけね。それも一真(鈴木)の一存ではなくて、子どもたちのミーティングで出来上がってきたと。
鈴木:そこはすごく大事。スクールはスタッフの私物じゃないからね。
スクールミーティングの様子
活動の様子
選挙について
ロペス:ちょっと思ったんだけど、選挙制度って怖いよね。1年しか雇用が保証されてないわけでしょ。そこのところ、どう思っているの?
鈴木:確かに1年で職を失う可能性はあるけど、自分はあまり恐怖だとは考えていない。現時点でスクールにとって一番良いスタッフを選べる制度だから。
ロペス:スクールにとってはね。一真(鈴木)にとってはどうなの?
鈴木:俺は八ヶ岳サドベリースクールでスタッフをできなくなったとしたら、それは残念だと思う。いや、残念というか、実力不足だったと捉えるかな。でもそれだけが仕事だとは考えていないし、八ヶ岳サドベリースクールで今必要じゃないと判断されても、他のサドベリーではスタッフができると自負している。
ロペス;強気やね(笑)
鈴木:仮に選挙で落ちて仕事にも就けなくなって、どこかで野垂れ死ぬとしても、スクールがそれで良くなってるならいいかな。
ロペス:単純に一真(鈴木)を好き嫌いで判断して、あいつうざいからクビにしようってなることも考えられるんじゃない?
鈴木:もちろんそれもある。ただその結果スクールがうまく行かなくなって潰れるっていうリスクも子どもたちは負っている。スタッフを選挙で選べるということは、当然選挙で選んだ結果に対して責任を負うことになるからね。それくらい子どもたちに責任がある。
ロペス:そうか。それは慎重に判断するね。いやーでも俺は職を失うって、怖いと思うけどな。
鈴木:怖くはないと言うと嘘になるけど。でもだからといってスクールにすがりつくのは間違いで、そうなるとスクールを私物化してしまう。スクールは子どもたちのものであって俺のものではないからね。
今後のビジョン
ロペス:今後、一真(鈴木)個人としてはどうしていきたい?
鈴木:より良い、質の高いサドベリースクールスタッフとは何か、というところを探し求めていきたいと考えている。どんな仕事をするのか、生徒から求められるスタッフとはどのような存在なのか。そういったものを追求していきたいと思っているかな。
ロペス:俺の中では、ずっとストイックにそれを突き詰めているイメージだけどね。
鈴木:いや、初めはそうじゃなかった。ただ「子どもと関わりたい」っていう、単純な動機でサドベリーのスタッフをしていた。今はそうではなくて、もっと質の高いスタッフとは何かを考えて、それを目指していきたいなと思っている。
ロペス:八ヶ岳サドベリースクールのこれからは?
鈴木:それは俺が決めることじゃない。子どもたちが決めること。俺のスクールじゃないからね。子どもたちのスクールだから。
ロペス:子どもたちの学校、そこは徹底してるんやね。
取材を終えて
今回夜行バスで遠方の山梨県まで足を運び、一真(鈴木)に話を聞いてきました。
私と一真。
同じ教育という分野に属していながら、全く思想や手法の違うサドベリースクール。
個人的には「それって大丈夫なのか?」と思うところも多いのですが、これからの時代、こういう今まで無かった形の教育がたくさん出てくるのは、個人的にとても楽しみです。
次はスクールの子どもたちにも話を聞いてみたいな。
今回はここまで。
インタビューに協力してくれてありがとう!!
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